今回は、抵抗分圧についてと、トランジスタの計算方法と実習について説明したいと思います。
■トランジスタの計算方法について
トランジスタの計算方法について説明したいと思います。
※ 計算に苦手意識のある方もいると思いますので、さらりと目を通してもらう程度で大丈夫です。 実際に計算する必要が発生した時に深く読み直したら良いと思います。
はじめに
トランジスタを使用したい場合、「 左側の小さな電流の回路 」と「 右側の大きな電流の回路 」と「 両方を意識した回路全体 」の3つを考えてあげる必要があります。
※ 回路構成や足の本数によって多少の違いはありますので注意してください。
いきなり「 全体の回路 」を考えるのは難しいですが、一つ一つ回路を分けて考えることにより理解しやすくなると思います。
どんな大きな複雑な回路も、小さな回路の集まりでしかないので、難しいという先入観にとらわれず、地道にひとつづつ理解してもらえたらと思います。
抵抗RB・電流IB・抵抗RC を計算で求めてみよう!
LEDを今回使用するため、LEDの使用条件を決めておきたいと思います。
【LEDの条件】
LED=赤色、順方向電圧2.1V、順方向電流20mA
【使用する回路】
回路について考える
さくらさん、この回路はどんな回路だと思いますか。
トランジスタを使って・・・
LEDを点灯させる回路ですか?
そうですね。
図面左側の小さな電流を使って、右側の大きな電流を動かす回路になります。
また、「 ?マーク 」で値が不明な部分も見られますね。
ほんとですね。
よく見ると?マークがあります。
今回はこの「 ?マーク 」の不明な部分の値を「 計算 」で導き出してみましょう。
えっ!?
計算・・・
抵抗RCの計算
トランジスタのコレクタ部に使用する抵抗「 抵抗RC 」を求めたいと思いますが、少し回路が複雑なので右側のLEDを点灯させる回路だけにして考えてみたいと思います。
回路図より、電源V2は「 5V 」。
上記LEDの条件より、順方向電圧は「 2.1V 」、順方向電流は「 0.02A(20mA) 」なので、オームの法則に当てはめると下記になります。
【式】
抵抗RC =(電源V2 – 順方向電圧) ÷ 順方向電流
【計算】
抵抗RC =(5V – 2.1V)÷ 0.02A = 145Ω
【答え】
抵抗RC = 145Ω になります。
電流IBの計算
今回「 hFE(直流電流増幅率)は100 」のため、電流ICの「 20mA 」は、電流IBの「 100倍 」と言うことが言えます。
ということは、電流IBは、電流ICの「 1/100 」ということが言えるので、
電流IB = 20mA ÷ 100 になります。
【式】
電流IB = 電流IC ÷ hFE
【計算】
電流IB = 0.02A(20mA) ÷ 100
【答え】
電流IB = 0.0002A(0.2mA) になります。
抵抗RBの計算
ベース部に使用する「 抵抗RB 」も、求めやすいよう、左側の回路だけにして考えてみたいと思います。
回路図より、電源V1は「 3V 」、電流IBは先ほどの計算結果より「 0.0002A(0.2mA) 」のため、オームの法則に当てはめると下記になります。
【式】
抵抗RB = (電源V1 - VBE) ÷ 電流IB
【計算】
抵抗RB = (3V – 0.7V) ÷ 0.0002A(0.2mA)
抵抗RB = (2.3V) ÷ 0.0002A(0.2mA)
【答え】
抵抗RB = 11500Ω(11.5kΩ) になります。
計算結果は、「 11.5kΩ 」となりましたが、ぴったりだとトランジスタのバラツキの影響でLEDの点灯に必要な20mAに足りなくなる恐れがあるため、「 10kΩや5kΩ 」など、少し低目の抵抗を使用するのが望ましいです。
仮に、IB×hFEが20mA以上になっても、右側の回路はLEDに20mAしか電流が流れないよう「 2で計算している 」ので問題ありません。
電流IEの計算
今回「 ?マーク 」はありませんでしたが、参考に「 電流IE 」の計算も記載しておきます。
【式】
電流IE = 電流IB + 電流IC
【計算】
電流IE = 0.002A(0.2mA) + 0.02A(20mA)
【答え】
電流IE = 0.0202A(20.2mA) になります。
答え合わせ
「 ?マーク 」の結果は下記になります。
抵抗RC = 145Ω
抵抗RB = 11.5kΩ (5k~10kΩ程度を使用するのが望ましい)
電流IB = 0.2mA
注意点
「 hFE:100の時 」コレクタ電流(IC)がベース電流(IB)の100倍流れると言っていますが、そもそもコレクタ側に100倍を許容する能力が無ければ100倍は流れないので注意してください。
どういうことですか?
いくら計算では大電流を流せることになっていても、乾電池1本しか使っていなければ、それ以上の電流は流せませんよと言うことです。
そうですね。
ポイント!
・hFE(直流電流増幅率)が100倍でも、電源が100倍の能力が無ければ意味はない。
・回路が複雑になっても、焦らずひとつひとつ読み解いていけば意外と理解できる。
■抵抗の分圧について
抵抗の分圧について説明したいと思います。
おさらい
以前、「 直列と並列についてと、キルヒホッフの法則について! 」で少し触れましたが、「 抵抗の分圧 」について簡単におさらいをしたいと思います。
【抵抗の分圧とは】
「 直列の時、電圧が抵抗の大きさに比例して分かれることを分圧と言う 」
下図のように「 電源①が5V 」だった時、「 抵抗が3Ωと2Ω 」だったら「 ②は3V 」と「 ③は2V 」)の電圧が掛かります。
※ 回路は数値を誇張して表現しています。同様の回路は作成しないでください。
【計算】
① ② ③
5V = 3V + 2V
【答え】
②=3V ③=2V になります。
抵抗を利用することで、電圧の大きさを変化させられることをなんとなくイメージできたでしょうか?
次はこの性質を利用し、「 欲しい大きさの電圧を作る方法 」に付いて説明したいと思います。
抵抗分圧
今度は、下のような回路があったとします。「 Vout 」に出力される電圧は何ボルト(V)になると思いますか。
抵抗分圧の公式を使うと分かるのですが、難しいので先に答えを見てください。
【分圧の公式】
Vout = R2 ÷ ( R1 + R2 ) × Vin
【計算】
Vout = 10Ω ÷ ( 10Ω + 10Ω ) × 5V
Vout = 10Ω ÷ ( 20Ω ) × 5V
Vout = 0.5Ω × 5V
Vout = 2.5V
【答え】
2.5V になります。
このようなタイプの回路の場合、「 R1 」と「 R2 」が同じ抵抗値なら、「 Vinの半分 」が「 Vout 」になるのが特徴です。
抵抗分圧(応用)
今度は「 R1 」と「 R2 」の抵抗の大きさが違います。このような場合も式に当てはめると答えが分かります。
【分圧の公式】
Vout = R2 ÷ ( R1 + R2 ) × Vin
【計算】
Vout = 3Ω ÷ ( 2Ω + 3Ω ) × 5V
Vout = 3Ω ÷ ( 5Ω ) × 5V
Vout = 0.6Ω × 5V
Vout = 3V
【答え】
3V になります。
もう少し詳しく説明
「 抵抗の分圧 」などと難しく言っていますが、実は下の図のように、「 直列と並列 」を混ぜた回路と言うだけです。
上の図を分かりやすくすると下図になります。
もっと分かりやすく書くと、下図のようになります。
どちらも同じ回路構成ですよね?
このように、「 抵抗の分圧 」を利用すると、回路の中で自分の欲しい電圧を作りだすことが可能になります。
ポイント!
・直列の時、電圧が抵抗の大きさに比例して分かれることを分圧と言う。
・抵抗を利用することにより、電圧の大きさを変化させることが出来る(欲しい大きさの電圧を作ることが出来る)。
・Vout = R2 ÷ ( R1 + R2 ) × Vin ・・・ 分圧の公式
・下図タイプの回路の場合、R1とR2が同じ抵抗値なら比率が1:1になるので、Vinの半分がVoutになるのが特徴。
■トランジスタとフォトレジスタで遊んでみよう!
トランジスタとフォトレジスタで遊びましょう!
はじめに
今回も計算などを記載しておりますが、参考程度で眺めて計算などしなくてOKです。
実際の作業をメインに遊んでみてください。
トランジスタとフォトレジスタ回路①
トランジスタとフォトレジスタ回路①の準備
トランジスタとフォトレジスタで遊ぶため、下記「 用意する物 」を準備してください。
【用意する物】
・フォトレジスタ(明10kΩ~暗1M程度)
・抵抗(10kΩ)
・LED(赤色、順方向電圧2.1V、順方向電流20mA)
・テスター
・ブレットボード
・ジャンパー線
・電池BOX
・乾電池(単三×2個)
・ライト
トランジスタとフォトレジスタ回路作成
下の回路図に習って、ブレットボードで回路を作成してみましょう。
※ 抵抗のカラーコードはイメージです。実際のものとは異なります。
トランジスタとフォトレジス回路①の説明
回路①は、フォトレジスタ(CdS)を暗くするとLEDが点灯する回路になります。
3Vの電源を、「 抵抗の分圧 」を利用してLEDに供給しています。
抵抗(R1)が10kΩでフォトレジスタが10kΩなので、明るい時はLEDに1.5Vしか供給されていませんが、暗くなるとフォトレジスタの抵抗が1Mまで上がっていきますので、3Vに近い電圧が供給されLEDが点灯します。
ただし、R1に10kΩを使用しているため、LEDが点灯してもうっすらとしか点灯しません。
電源3Vで、LEDを電流20mAで点灯させるには、抵抗45Ωで足りるので、10kΩ(10000Ω)では大きすぎますね・・・。
トランジスタとフォトレジス回路①実習
回路の電源をONにし、フォトレジスタを段ボールや手などで隠し、暗くしてみましょう。
LEDは光りましたか。
あまり明るくならなかったと思いますが、今回は、フォトレジスタが動いていることが確認出来たら良しとしましょう。
トランジスタとフォトレジスタ回路②
トランジスタとフォトレジスタ回路②の準備
トランジスタとフォトレジスタで遊ぶため、下記「 用意する物 」を準備してください。
【用意する物】
・フォトレジスタ(明10kΩ~暗1M程度)
・抵抗(45Ω×1、14kΩ×1)
・LED(赤色、順方向電圧2.1V、順方向電流20mA)
・トランジスタ(2SC1815相当品)
・テスター
・ブレットボード
・ジャンパー線
・電池BOX
・乾電池(単三×2個)
・ライト
トランジスタとフォトレジスタ回路②作成
少し複雑になりますが、下の回路図に習ってブレットボードで回路を作成してみましょう。
※トランジスタの足(ベースB・エミッタE・コレクタC)の接続はメーカによって異なるため、各自データシートなどで確認してください。
トランジスタとフォトレジス回路②の説明
回路②も、フォトレジスタ(CdS)を暗くするとLEDが点灯する回路になります。
但し、回路①はLEDが暗すぎたので、トランジスタを今回使用しました。
LEDをONさせたいときはVBEに0.7Vが必要になり
LEDをOFFしたいときはVBEが0.7Vより小さく(すごく小さく)してあげる必要があります。
実際には計算をしてあげる必要があるのですが、今回は私の方で計算しましたので下記を参考にしてください。
「 用意する物 」と同じ材料を使用している場合、特に計算する必要はありません。
【LEDを点灯させる(VBEに0.7Vを流す)には】
(電源V – VBE) ÷ IB
(3V – 0.7V) ÷ 0.0002A = 11.5kΩ 程度
【LEDを消灯させる(VBEを0.7V以下にする)には】
0.7Vの半分0.35Vくらいで計算してみます。
(3V – 0.35V) ÷ 0.0002A = 13.25kΩ 程度
11.5kΩ より大きく、13.25kΩ 程度のものを使いたいため、
今回は「 14kΩ 」にしました。
トランジスタとフォトレジス回路②実習
回路の電源をONにし、フォトレジスタを段ボールや手などで隠し、暗くしてみましょう。
LEDは光りましたか。
何もしなくても光っているし、暗くしても光っている場合、日中でも、部屋が少し暗いと上手くいかないと思うので、部屋の電気を付けるなどして部屋を明るくしてみてください。
今回は、「 回路① 」とは違い、LEDの点灯/消灯が確認出来ると思います。
さいごに
今回は実習メインなので、下記二つの確認が出来たら良しとしてください。
・回路① LEDの点灯が薄暗くなってしまった。
・回路② LEDが明るく点灯した。(消灯も確認できた)
■まとめ
トランジスタの計算方法
・hFE(直流電流増幅率)が100倍でも、電源が100倍の能力が無ければ意味はない。
・回路が複雑になっても、焦らずひとつひとつ読み解いていけば意外と理解できる。
抵抗の分圧
・直列の時、電圧が抵抗の大きさに比例して分かれることを分圧と言う。
・抵抗を利用することにより、電圧の大きさを変化させることが出来る。
・Vout = R2 ÷ ( R1 + R2 ) × Vin ・・・ 分圧の公式
・下図タイプの回路の場合、R1とR2が同じ抵抗値なら比率が1:1になるので、Vinの半分がVoutになるのが特徴。
実習
・回路① LEDの点灯が薄暗くなってしまった。
・回路② LEDが明るく点灯した。(消灯も確認できた)